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6話
むつと祐斗は片付けをして、毛布やポットを持って社務所にやってきた。とんとんっとノックをしても、誰も出てくる気配はない。引き戸に手をかけると、鍵はかけない主義なのか簡単に開いた。
「すみませーんっ‼土地神様?狛犬ー?」
呼び掛けても何の返事もない。誰も居ないのか、しんと静まり返っているし冷え冷えとしていた。
「あの、毛布とポットありがとうございます。一旦帰ります…力不足かもしれませんが引き続き、調査しますので…よろしくお願いしますっ」
むつは大きな声で言い、毛布とポットを玄関先に置いた。そして、祐斗と一緒にぺこっと頭を下げた。
「…帰ろう」
2人が玄関をしめて境内に差し掛かると、さらさらと風に乗って穏やかな声に呼び止められた気がした。よろしく頼むよ、今日はゆっくりお休み、そう聞こえた気がして2人は顔を見合わせた。
「あまり外には出られないんだろうね」
「かもしれませんね」
むつは2体ある狛犬の顔を交互に見て、片方の狛犬の足を撫でた。そして、もう片方の狛犬の頭を撫でると、ありがとっと言って祐斗と石段を降りていった。




