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6話
「覚えてる範囲内でなら…」
「…分かった。それでいい」
むつは少し困ったような顔をして、膝を抱えるようにして座ると、胸元の鈴に触れた。
「追ったんだよね。何かムカついて…どう走ったのか覚えてないけど、神社の裏手に来たの。で、追い掛けて境内に出て…何か言ってた気がするけど覚えてない。で、向こうから来たから…出来るだけの対応をしたつもりだったけど」
「胸ぐらを掴まれて吊し上げられた、と」
「そんな感じ。けど、何か色々忘れてるような気もする…何で、こんなに曖昧なのかしら」
「気絶したからじゃないのか?」
「かなぁ?」
こめかみの辺りを押さえたむつは、うーんと唸った。
「何か思い出したら言えよ。で、車は神社の駐車場にあるからな。検証始まる前に勝手に動かしたぞ。停めて何してたってなると面倒だしな」
「あ、うん。ありがと…」




