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5話
西原から離れたむつは、がばった祐斗に抱き付いた。
「わっ、わゎ…っ‼」
祐斗はぐらっと後ろに倒れて、冬四郎にぶつかるとそのまま冬四郎共々仰向けに倒れた。祐斗の下で、冬四郎が呻く声がした。
「む、むつさんっ!?」
「無事で良かったぁ‼」
肩にぐりぐりと顔を押し付けて、むつは鼻を鳴らしている。ぐずぐずと泣きべそをかいているようで、祐斗はむつの背中に手を回してぽんぽんと慰めるように叩いた。
「…おい、おっさんは子供2人を抱えられる程力ないんだ。下りてくれるか?」
下から低い声が聞こえ、祐斗はむつと一緒にすぐに横におりた。だが、むつは冬四郎の不機嫌そうな声など気にしていないのか、ごろんっと冬四郎の上に戻った。
「おっさん?しろーちゃんが?」
「そうだ。狛犬からおっさん呼ばわりだ」
けほっと咳き込んだむつの背中を撫でながら、冬四郎は文句を言わずにむつを抱き締めていた。冬四郎の上で、ごろっと腹這いになった。
「怖かった。初めて…死ぬのが怖いって…いつもなら平気なのに…能力が使えないって、自分じゃないって事で…祐斗も危なかったし…ほんと、怖かった」




