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5話
寝かせたむつの顔を西原が、そっと撫でてやるとむつの睫毛がふるふると揺れた。ゆっくりと目の開けたむつは、ぼんやりとしているのか西原の顔を見上げた。
「どこ、ここ…」
かすれた声しか出ないのは、首を絞められていたからなのか、こほっと咳き込んだむつは、手をついてのろのろと起き上がった。
「神社の中だ。何があったかは覚えてるか?」
西原が背中に手を回してむつを支えると、その手に少し体重をかけるようにして起きるのを手伝って貰ったむつは、顎を引くようにして頷いた。
「女は…?」
「悪いな。取り逃がした」
そうっと溜め息を取り混ぜた、がっかりしたような声に西原は申し訳なさが募った。
「来るの遅くなって悪かったな。あちこち痛むんじゃないか?まだ横になってた方が…」
「本当…遅い。あの女、すっごい血の臭いしてた。狛犬も女が境内を汚したって言ってたから…犯人の可能性もあったのに」
むつの責めるような言い方に、西原はただ謝るしかなかった。




