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5話
だが、女は易々と祐斗を振りほどき、ばしっと祐斗の横っ面を叩いた。血が流れている腕のどこに、そんな力があるのかと思う程の力に祐斗は、吹き飛ばされて狛犬の台座に背中を打ち付けて、ずるずると座り込んだ。
冬四郎がはっとした時には、するっと腕が抜かれてばしっと叩かれていた。祐斗ほど軽くはないからか、飛ばされはしなかったものの、それでも吹き飛ばされた。だが、ふかっとした物が下にありどこも痛くはなかった。
「おっさん‼重いどけぇっ‼」
「うわ…犬、悪い。助かった」
「我巻き添え‼足で惑いなやつめ」
ぎゃんぎゃんと狛犬が怒っている間に、西原にむつに手を伸ばしていた。腰に手を回して受け止めるつもりでいたが、むつの身体は途中で落下を止めた。
「なっ…」
祐斗と冬四郎を易々と振りほどいた女は、むつの首をがしっと掴んで高々と持ち上げていた。




