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5話
夜空を見上げるようにしていた狛犬は、ふんっと鼻を鳴らした。そして、祐斗の方を向いた。
「神社だ。祐斗とおっさんは我とむつを追って裏からだ。西原、石段登って正面から行け。そうすれば、どっかでむつを見付けられるはずだ。外れてても我が追える、祐斗に連絡させる」
そう狛犬は断言すると、祐斗と一緒にむつが走っていった方向に走り出した。おっさん呼ばわりされている冬四郎も、他に手がないと分かっているからか、少し遅れて走り出した。石段を登れと言われた西原は、明らかに嫌そうな表情を浮かべたものの、仕方なく大通りに出て神社を目指す事にした。
狛犬に言われた通り、正面から神社に向かっていた西原は、夜中とは言えど1台も車が通らない大通りをちらっと見た。不気味なくらいに静まり返っており、ぞわぞわっと鳥肌がたった。
こういう時は何となく、嫌な事が起きそうで西原はさらに急いだ。




