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5話
「宮前さん‼そんな、悠長な。いくらなんでも、むつさんなわけないじゃないですか‼女です、女!!」
「むつも女だぞ?」
西原も突き刺さったバットをしげしげと眺めている。2人とも暢気なのか、バットを気にしていた。
「西原さん‼むつさんが危ないんですってば‼」
「谷代君、落ち着いて。むつは女を追って行ったんだね?どこに行ったかは?居場所が分からないと追えない」
「場所…場所は分かりません」
「なら、どっちに行ったかは?」
落ち着いている冬四郎の声を聞いているうちに、祐斗も落ち着きを取り戻したのか、むつが走っていった方向を指差した。冬四郎と西原は頷き合うと、むつが行った方に行こうとした。だが、その前に狛犬が立った。
「待て。我が探してやる…おっさん、無闇に走るな。体力なくなったら、むつに追い付けなくなる」
「…お、おっさんって、俺か?」
唖然としている冬四郎をよそに、狛犬はひくひくと鼻を動かし、ぴくぴくっと耳を動かしている。匂いと音を追っているのかもしれない。




