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5話
祐斗が悪態をつきながら、一旦動くのを止めた頃、大通りの方から猛スピードで近付いてくる車の音が聞こえた。きゅっとタイヤを鳴らして、急ブレーキをかけると、ばたんっとドアの音がし、ばたばたと駆け寄ってくる足音。
「祐斗君‼居るのか!?」
「っ西原さん‼遅いですよ‼ここですっ‼引っ張り出してください」
「は?ここってどこ…お、おぉ…あれか」
「西原ーっ‼我も出せ我もだ‼」
「あ、狛犬」
駆け寄った西原は、じたばたとしている白く太い足を掴むと、ずるずるっと引っ張った。一緒に来た冬四郎は、植木に身体を押し込むようにして、祐斗の手を取ると起こしてから引っ張った。がくんっと膝をついて、地面に落ちた祐斗は溜め息をついた。
「谷代君、何があった?むつは?」
「あ、そうだ‼むつさん、女を追って行っちゃったんです‼追わないと‼」
冬四郎も西原も落ち着いたもので、祐斗と狛犬を見てから、辺りを見回した。
「…ブロック壁にバットが刺さってるな。むつの仕業か?」
眉間にシワを寄せて、冬四郎が唸るように言っている。妹ならやりかねないと本気で思っている様子だった。




