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5話
祐斗の叫び声と共に、むつは半歩下がってバットを避けると、地面に当たったバットを足で踏んで押さえ付けた。そのままグリップに手を伸ばし、無理矢理にも奪おうとした。
「…え?」
だが、ふわっと身体が浮き振り回される感覚がしたと思った時には、背中に鈍い痛みがはしった。女はむつが足で押さえてたにも関わらず、力任せにバットを振り上げて振り回すようにして、むつを壁に打ち付けた。ずるっとコンクリートの道に倒れたむつは、痛みですぐに動けなかったが、どうにか顔を上げて女を見た。自分の体重が軽いわけではない事をじゅうぶんに承知しているむつは、有り得ないというような顔をしていた。
むつが危ないと思い、狛犬と共に出てきた祐斗も唖然としたように女を見ていた。
「祐斗、危ないから…」
むつは顔をしかめたまま、手をついてどうにか身体を起こしたが、まだ立てずにいる。




