表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋 -無い物は-  作者: 幹藤 あさ
233/753

5話

むつは深呼吸をして、公園の入り口近くの植木の後ろに隠れた。葉はなく、細い枝だかりだが、夜であれば隠れていても見付かりにくいだろう。


かんっかんっという金属音は、いつしかからからからからっという引きずられるような音に変わっていた。やけにゆっくりと近付いてくるようで、待っている間に緊張は大きくなり、心臓の鼓動が激しくなっていた。走ったわけでもないのに、呼吸が浅くなり息苦しさを感じた。緊張なのか恐怖なのか、むつにはどっちもなように思えた。何かあっても、すぐに飛び出していける自信もない。能力が使えないというのは、こんなにも不安で恐ろしくなるものなんだと改めて思わされていた。その不安と恐ろしさは、いつも当たり前にある物がない事に対する、寂しさと違和感でもあった。


無意識のうちに、むつは胸元に手をあてて服をぎゅっと握っていた。落ち着きのない心臓の音が、外にまで聞こえているようで、それが近付いてくるものにまで聞かれそうで、それだけでむつは怖かった。


両手で口元をおおって、大きくゆっくり深呼吸をした。袖を伸ばして口元をおおっているから、白い息が出る事はなかった。服からは洗濯したての柔軟剤の、自分の好きな香りはするが、それがいつもの臭いとも違うようで、より一層落ち着かない気分になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ