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5話
じゃりっと砂を踏むような音と共に、かんっかんっと金属を叩くような音が聞こえてきた。まだ姿は見えないが、音は確実に近付いてきている。
むつは祐斗と狛犬にこの場に居るように言ってから、そっとベンチの後ろから出た。姿勢を低くしたまま、静かに地蔵の方に近付いていく。祐斗も追って、出ていこうとしたが狛犬に襟をくわえられて引き止められた。
「まだだ。人数が多いと気付かれる」
狛犬は座ったまま、じっとむつの後ろ姿から目を離さないでいる。祐斗は仕方ないと言いたげに、いつでも動けるようにしゃがんで地面に指をついていた。指先から、地面の冷たさが伝わりどんどん体温が奪われていく気がした。
相変わらず多い浮遊霊たちは、むつの行動が気になるからなのか、それとも近付いて来るものが気になるからか、地蔵の方に寄り集まっているようだった。




