1話
走っていると言っても、運動不足のむつと普段から運動している西原、男女差もあるのかやはり脚力がある西原は、すぐにむつに追い付いた。
「…先輩ストップ!!」
地蔵のある細い道に入ろうとした、むつだったが西原の前に立ちふさがるようにして西原を止めた。どんっとぶつかり、むつは数歩よろめいて後ろに下がった。
「…っふ」
むつがそのまま、倒れこむのではないかと思った西原は、むつの腰に手を回して引き寄せた。むぎゅっとむつは西原の胸に顔を押し付けられ、今度は呻いた。
「ごめん、大丈夫か?」
「ん、あたしこそごめん。ここ、入っちゃダメだ…祐斗、ここの霊が多すぎて身体がついていかなかったんだと思う。先輩には分からないかもしれないけど…さっきも入ってるなら、尚更入っちゃダメ。危ないと思うもん」
「そうなのか?」
西原の胸元から顔を上げたむつは真剣な目をして、こくっと頷いた。
「でも、もうちょい引き止め方あっただろ?」
ごめんと謝ったむつは、そっと西原の胸から離れた。むつは細い道に踏み込んでいるが、西原はぎりぎり入ってはいない。
「そこから、動かないでね。お地蔵様は、この奥よね?ちょっと見てくるから」