229/753
5話
祐斗も狛犬と一緒に静かに車から降りて、むつの後を追った。むつは足音も立てずに、公園の砂地の道を歩いていく。
「むつさん…」
「静かに。先輩に電話して…」
公園の中央くらいまで来ると、むつは大きな木の影に隠れながら祐斗に指示を出した。言われた祐斗はすぐに西原に電話をかけた。時間が時間なだけに、西原はすぐには出ない。
「先輩に来てって言って…祐斗にここに狛犬も」
むつは狛犬の頭を撫でると、するっと木の影から出て行った。黒い服のせいなのか、むつの姿は闇に溶けるようにしてすぐに見えなくなった。
走るわけでもなく、むつはゆっくり足音を立てないようにして、以前祐斗を待っていた時に座っていたベンチの後ろまで来ると、膝をついてしゃがんだ。ベンチの後ろからは、細い道がよく見えるし地蔵も見える。




