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5話
むつが眠りどのくらい経ったのだろうか。携帯ゲームにも飽きてきた祐斗は、座りっぱなしで痛くなった尻を浮かせて体勢を変えた。
毛布をしっかりかぶり、祐斗の方に顔を向けて少しだけ口を開けて寝ているむつは、仕事中だというのに暢気そうだった。
子供のように暢気に眠っているむつのすぐ横にいた狛犬は、ぴくっと耳を動かして顔を上げた。
「何か来るぞ」
狛犬が低く呟いた。祐斗はむつを起こそうとしたが、むつはすでに目を開けていて、毛布をどかしていた。身体を起こしたむつは、じっと外に目を向けている。
「祐斗、鞄取って」
「はい…何が来るんですか?」
「分かんない」
祐斗から鞄を受け取ったむつは、中からペンライトを取り出した。そして、上着を脱ぐと静かに車から降りた。




