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5話
「…むつは意外としっかりしてないな」
「うっさい」
座席を倒して、むつは毛布を身体に巻き付けて横になった。ふぁふぁと欠伸をしているし、眠いのかもしれない。
「仮眠取りますか?」
「うん、ごめん…ちょっとお願いね。ずっと見てなくてもいいから何かあったら気付けるようにだけしといて」
「分かりました」
後部座席の狛犬も丸くなり、むつの顔の近くに頭を置いて目を閉じている。1人にされるのかと思いつつも、祐斗は少し座席を倒して楽な姿勢で外に目を向けていた。むつにはずっと見てなくてもいいと言われたが、何かあっても気付けない気もしてか、視線だけは外に向けている。
むつは寝付きがいいのか、すでにくぅくぅと寝息を立てている。狛犬も眠ったのか、腹の辺りがゆっくりに上下している。神の使いで、石のくせに普通に寝るんだなと祐斗は呆れたように見ていた。




