5話
そこまで言ってから、むつはふいに狛犬に目を向けた。そして、首を傾げた。
「神と仏じゃ領域が違うじゃない?なのに、何で土地神は仏の為に動いたのかしら?」
「この土地に後から出来たのが地蔵で、土地神というのは土地の父親みたいな者だから。地蔵も生活する人も、子供のような物なんだ」
「ふぅん?面倒見が良いって事か。お優しい方にお仕えするっても大変だろうね」
むつは何か含みのあるような言い方をした。狛犬は、ふるふると顔を振ってそんな事はないと言った。
「でも、むつはよく引き受ける気になったな。神からの頼みもよくあるのか?」
「ないない。初めてよ。狛犬と話すのも初めてだもん。犬神は…あ、犬神も神かしら?」
「犬神と知り合いなのか?」
「うん。やっぱり、神ってつく方って面倒見が良くて、お父さんみたいなのかしらね」
むつは京井の姿と宮前の父親の顔を思い浮かべて、見た目もだけど中身も似てるよなと思っていた。そう思うとやはり、兄である冬四郎も晃も似ている。
「…変なの」
「何がですか?」
独り言のように、思わず漏れた呟きが祐斗に聞こえていたようで、祐斗は地蔵が何か変なのかとしゃがみこんでいた。
「あ、いや…お地蔵様じゃなくてさ。しろーちゃんもいちにぃも似てて、兄弟でもやっぱ、あたしは似てないよなーって。親が違うからだろうけど…」
「そうですか?宮前さんとむつさんは似てますよ?警視正とむつは似てませんけどね。宮前さんと警視正は似てますし…ちょっと不思議な感じですよね」




