5話
置いてかれた祐斗も上着を着ると、狛犬と一緒に車から降りた。浮遊霊は相変わらず多いが、何故か少し避けられているのか周りには居ない。どういう事なのか分からないが、むつの周りにはふよふよと浮遊霊たちは漂っている。
むつは浮遊霊なんて気にもしていない様子で、しゃがみこんでは地蔵を見ている。どんなに観察しても、動くわけでもないし、何の変化もない。昨日見た時と同じように、佇んでいるだけだった。
「むつさん?」
「…分かんない。ぜんっぜん分かんない。あー考えるの嫌い。悪いなら悪いでやっつける、正義の味方みたいなやつのが分かりやすくていいのに」
「そうですね。でも、むつさん正義の味方には見えませんからね。悪役似合いそうですから」
「うるさいわよ。あんたも人任せにしてないで頭使いなさいよね」
「はぁ…でも、見てても何にも変化ないんすよ?分かるのは、今は何故か浮遊霊に避けられてるって事です」
むつは顔を上げて、顎を反らすようにして立っている祐斗の顔を見た。
「狛犬居るからね。狛犬は神様にお仕えする者。浮遊霊は仏の元に行く者。領域が違うし、狛犬のが断然力はあるからね。怖がってるんでしょ…」




