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5話
「ね、それでさ…知ってるよね?この辺が、何でこんな事になってるのかを」
むつはタバコを口にくわえたまま、にっと笑ってみせた。タバコのせいなのか、外が暗くなっているからなのか、怖いような悪い笑い方だった。
「あんまり喋るとまた怒られる」
「片割れに?土地神に?」
「片割れに」
「土地神はさ、ここをどうにかして欲しいって言って来たのね。それに協力するなら、土地神は誉めてくれるんじゃないかしら?」
だめ押しのように優しげにむつが言うと、狛犬は困ったように首を傾げた。それ以上は何も言わずに、むつは黙って狛犬がどうするかを見守っている。
「分かった。むつはミルクも菓子もくれたし…我の事を気付いてくれたからな」
「そうそう、隠し事はよくないよ」
それをむつが言うかと言いたげな祐斗の顔に気付くと、むつはぱちんっと祐斗の額を叩いた。




