5話
狛犬を乗せて、堂々と地蔵のある細い道の、それも地蔵の少し前で車を停めたむつは、エンジンも切って狛犬を見た。
「さ、ここでならいいかな?話して。何で、この前土地神と一緒に来なかったのよ」
「う…それは…我は出歩くしすぐに喋るから…ダメだって。それに、神が出掛けるなら、常に神の側を離れない方が行くべきだって言われたから…」
「片割れにそう言われて留守番してたのね。来てくれたら良かったのに…あの子、やけになついてきたけど…喋らないし、嫌われちゃったのかと思ったわ」
「我だって行きたかったけど…」
「土地神は結局、片割れの子置いて帰っちゃったからね。送り届けたけどさ。あ、お菓子食べた?」
「我はレーズン嫌い」
「お‼まじか‼一緒、一緒。だよねぇ良さが全然分からないわ」
むつはうんうんと頷いている。祐斗はむつと狛犬が、仲良さげに会話しているのを不思議な物を見るように見ていた。
「バームクーヘンは美味しかったけど…我は前に貰ったクッキーの方が好きだ」
「あ、そうなんだ。また買ってあげるね」
「…で、これが祐斗?この前の西原は?昼間に、もう1人の男と来て我の足を撫でてくれたぞ。どっちが事務所に来たのかは分かりませんけど、とか言いながら」
「宮前さんとでしょうか?」
「たぶんね。その男2人は何しに来てたの?」
「事件の事じゃないか?人が死んだから」
成る程ね、とむつは頷いた。そして、タバコをくわえて火をつけて煙を吐き出した。




