5話
身支度をしてから、ダイニングテーブルでほんのりと暖かい炒飯のラップを外して、スプーンですくって一口食べた。人が作ってくれた食事は久しぶりで、美味しいとは思うがそれ以上は食が進まずスプーンを置いて、ラップをした。
コーヒーを淹れなおして、タバコを吸っていると、がちゃがちゃと鍵の開く音がした。
「たっだいまー。ごめんね、何かあっちこっち見てたから遅くなっちゃった」
「まー。むつ、炒飯食べた?」
「こさめ、まーって菜々に被せて言ったつもりでしょ?まーだけがちゃんと聞こえたわよ。おかえりなさい」
「えへへ」
本当にスーパーに行っていたようで、なさっと買い物袋をキッチンに置いた、こさめはダイニングテーブルの炒飯を見て、少し困ったような顔をした。
「全然、食べてないじゃないの。昨日も一昨日もあんまり食べてないし…そんなので仕事行けるの?」
「行けるよ。まだ、あんまり食欲ないのかも…けど、美味しかったよ。レタス使いきった?」
「うん。萎びてきてたから」
「ありがと。主婦だねぇ…さて、そろそろ行く準備するから。駅前の鍵屋さん行くからさ…一緒に来てね」
タバコを吸い終えると、むつは上着を着たりして準備をした。小さめのショルダーバッグに財布とハンドタオルを入れて、携帯は上着のポケットに入れた。
「今日は携帯持ったから大丈夫よ」
「あれは?」
こさめはリビングの棚の横に立て掛けてある、布に包まれた物を指差した。ちらっと見たむつは、ゆるゆると首を振った。




