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5話
ソファーに寝転んだまま、灰皿を引き寄せて火を消すとむつは仰向けになって、目を閉じた。疲れは抜けている気がするが、動く気になれない。だが、いつまでもだらだらしてもいられない。風呂に入ってから、着替えたら気分も切り替わるだろう。むつは、はぁと溜め息をついて風呂場に向かった。
熱いお湯で暖まり、濡れたままの身体にオイルをぬりたくってからバスタオルで拭った。下着を身に付けて、顔を洗い歯を磨いてからむつはバスタオルを首にかけたまんまリビングに戻り、冷えたコーヒーを飲んだ。菜々もこさめもまだ戻ってこない。仕方なく、むつは菜々に電話をかけた。
『はいはーい』
「あんた、どこ?鍵は?」
『あ、ごめん。あたしが持ってる…もしかして、そろそろ出る?』
「もぅちょっとしたら、かな…鍵貸して。合鍵作りに行かなきゃいけないし」
『あ、そっか。すぐ戻るね』
ぷちんっと電話が切れた。むつは、薄手の身体にフィットしたTシャツを着てからシャツを羽織って、ボタンをとめていく。厚手のタイツをはいて、スーツのパンツをはいた。




