1話
不自然なくらいに自然体のような西原は、祐斗が何も言わずに自分の方を見ていると分かってか、ジャケットのポケットからタバコを出すと吸い始めた。いつもなら、いいかって聞くのに今は、そんな気遣いのある一言もなかった。
「…クリスマスプレゼントですか?聞き方が露骨すぎですね」
「うるさい、うるさい。本人は聞いたら、意味ないだろ?むつが来なかったのは残念だけど、話しやすい祐斗君でラッキーだよ」
「むつさんへのプレゼントかぁ…俺は手袋にしようかと思ってます。この前、力の入れやすい革の手袋ならとか言ってましたから。むつさんって物欲ないですよね。社長もクリスマス何が欲しいかって聞いてましたけど、何もなーいって言ってましたよ」
「本当に欲しい物は自分で買うしな。欲しいっていう執着があんまりないからな」
「昔は何をプレゼントしたんですか?」
「昔なぁ…ピアス、ネックレス…香水とか?」
「それなりに付き合って長かったんですよね?ペアリングとかしなかったんですか?」
「あーまぁ、あれだ。その辺は聞くな。傷口に塩ってやつだな。寒いから余計に痛む」
「…でも、まだ諦めてないんですよね?」
「うるさい」
「むつさんってモテますよね。あのリンって人もですけど、京井さんも宮前さんもむつさん大好きですし。俺もむつさん大好きですから競争率高いですよぉ」
笑いながら祐斗が言うと、むっとしたのか西原はぷーっと祐斗めがけて煙を吐き出した。こほっとむせながら、煙を払い窓を開けた祐斗は、西原を子供みたいだと思った。
「競争率高いよりも周りの守りが固い」
「うちの紅一点でエースですから」
「そのエースは面倒くさがりで現場には出てこないと。よく山上さんも何にも言わないな」
「仕事の振り分けも受けるかも基本むつさんが決めてますから。一応、俺か湯野さんかも相手を見て決めてるみたいですよ。昨日は宮前さんの所にも行ったの俺でしたから」
「…宮前さんの所?殺人があったな…それか?」