4話
むつは寒いのか、かたかたと貧乏揺すりをしている。じっとしていても寒いが、動いていても寒い。吹き付ける風が冷たすぎて、マスクもマフラーもしているのに鼻の奥が痛い。
風避けになるものもなく、むつはただ祐斗が戻ってくるのを待っている。監察などせず、一緒に行けば良かったと今更後悔しても遅い。
歯をかちかちと鳴らし、膝を抱えてなるべく身体を密着させて体温が逃げないようにと思っても、風が吹いていてその効果はない。浮遊霊が大量に居る場所だからなのか、余計に寒い。むつはずっと鼻をすすった。長く居ては風邪をひく。間違いなくひくと思っている。
「むつさーんっ‼お待たせしました‼」
「…うぅっ…一緒に行けば良かったわ」
祐斗が戻ってきて、暖かい紙コップを渡してくれた。祐斗は急いで戻ってきてくれたのか、少し息が弾んでいるし鼻も赤くなっている。
「ありがと。はぁ…暖かい」
「こちらこそ、ご馳走になります。で、これお釣りとレシートです」
「ん、ありがと」
受け取ったレシートと小銭がパンツのポケットに押し込むと、むつは白い湯気の出ている紙コップに口をつけた。
「あれ…紅茶?」
「はい。コーヒーは身体冷やすって言うじゃないですか。暖かい地域の飲み物だから…なので、紅茶に」
「そっか。本当ありがと」
にっこりと笑ったむつは、湯気と一緒に暖かい紅茶を少しずつ飲んだ。身体が冷えきっているせいか、喉から胃に暖かい物が流れていくのがよく分かった。




