4話
祐斗が千円札をジーパンのポケットに突っ込み、走っていくのを見送りむつは公園のベンチに座った。背を向けている方の道は、少ないが車も人も通る。だが、むつが目を向けている方の道はというと、人も車も通らない。
「…結界の効果かなぁ」
どういう事なのか、分からないがむつはうろうろと行き宛もなくさ迷う霊を眺めながら、マフラーとマスクをずらした。パーカーのポケットからタバコを出して、くわえると火をつけた。口から吐き出された煙が、霊たちと同じ様にゆらゆらとしている。
携帯灰皿に灰を落とし、むつはぼんやりと道を見ている。こうも動きようのない仕事も、なかなか無いよなと思っていた。それに、今度の仕事は初めての事が多い。土地神という神からの依頼であったり、能力が使えなかったり、浮遊霊の大群が目の前にあったりと経験しようと思っても出来ない事ばかりだった。
「ふ、ふぇっくしゅっ…うぅ…寒っ」
ぶるぶると身体を震わせ、むつはタバコを半分ほど吸った所で、地面に押し付けて火を消した。そして、灰皿に入れるとそれをポケットに突っ込み、マスクとマフラーを戻してから手もポケットに入れた。




