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4話
隈隠しの眼鏡をずらして、むつは目を細めた。公園にも道にも、何ならむつの身体を突き抜けてまで霊がうようよとしている。
「何か、不思議な場所ですよね。こんだけ居ると、流石にいい場所とは思えませんけど…」
「うん。異様だもんね」
それでも、あまり気にしていないのか、むつは霊を突き抜けてすたすたと歩いていく。
「…ちなみに、どのくらい視えてますか?」
「多すぎて、強くなってるのかしらね?わりとまぁくっきり、はっきり…視るのと気配は、自分で思ってる以上に落ちてないのかも。能力はまったくダメだけどね」
1度、みんなの前で話しているからか、むつは自分の能力が使えない事を普通に言えるようになっている。心なしか、ほっとしているような感じさえしている。
手のひらを見て、ふぅぅっと息を吐きながら身体に力を込めているようだったが、何の変化も生じる事はない。むつは、祐斗を振り返ると肩をすくめてみせた。その仕草もさっぱりとした諦めがあって、可愛らしかった。