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4話
顔の回りを飛び回る蝿を払うかのように手をを振りながら、むつは浮遊し近寄ってくる霊を追い払っているが、ただ空をきるだけで触れるわけではない。祐斗はその様子を見ながら少し首を傾げた。廃病では、イカれた霊を殴ったり蹴ったりしていたはずだったが、やはり能力が使えないせいなのだろか。だが、あの時すでに能力が使えなかったとむつは言っていた。どういう事なのか、祐斗にはよく分からなかった。
「…何、ですか?」
「どうしたのかなって思って」
「え、いえ何でもないです」
考え事をしていたのが顔に出ていたのか、むつが心配そうな顔をして立ち止まっていた。危うくぶつかりそうになり、祐斗はへらっと笑みを見せた。そして、また歩き出そうとするとむつが袖を掴んで引き止めた。
「どこまで行くのよ?ここよ」
「あ、すみません。ちょっと考え事を…」
「仕事の事?それなら言ってくれたらいいのに。祐斗の方が分かる事は多いはずなんだし…そうじゃないなら、こっちに集中して」
「はい…すみません」
祐斗はぺこっと頭を下げて謝り、腰の高さくらいの位置にある地蔵に目を向けた。