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4話
「帰しちゃって良かったんですか?」
「いいでしょ。犬は好きだけどさ…何か、監視されてるみたいで嫌だもん」
むつはそう言うと、もう神社には用がないのか、真っ直ぐに地蔵のある方に向かっていく。
よろず屋の事務所を出た時には、まだ十分に明るかったが、すでに太陽は傾きつつあり、それと共に寒さも増してきている。むつは寒そうに、ポケットに両手を突っ込んでマフラーに顔を埋めている。すれ違う人々も寒そうに、足早に目的地に向かっていく。寒さをものともしないのは、小学生たちくらいだろう。ランドセルを背負い、ふざけあいながらばたばたと走り抜けていく。むつと祐斗は、そんな小学生を横目にあまり近寄りたくはない地蔵のある細い道の前までやってきた。
道の前で立ち止まると、一段と気温が低くなったような気がした。太陽が傾いてきたのも、風があるせいではない。場所が悪いのだろう。
「…祐斗、あたしにはさ。浮遊霊がぱんぱんに詰まってるように視える気がするけど?どう?」
「その通りですよ。ここら一帯に、浮遊霊たちが押し込められてるみたいですね」
2人の意見は一致しているようだった。