1話
ぷっつりと会話が切れたきり、むつは外を眺めているだけだし、西原はタバコを吸いながら運転をしているだけだった。何と無く会話は無かったが、車に酔ってきたのかむつが上を向いたりするようになると、西原は少し窓を開けてやった。その時に、ぼそっと礼を言ったのを最後に神社近くの駐車場に着くまで2人とも口を開かなかった。
さっさと車から出たかったのか、むつはコートを羽織る事なく降りた。腕にコートをかけたまま、辺りをゆっくりと見回している。
「あれが大通り?」
「あぁ。風邪引くからコート着ろよ」
うん、と素直に頷くとむつはマフラーを巻いてコートを着た。ショルダーの鞄を斜めにかけ、寒いのかポケットに手を突っ込んだ。
「行き先は地蔵でいいのか?」
「神社から?祐斗が辿った通りに」
乗り気ではなさそうだが、それでも仕事としてきちんと行う気はあるようで、むつはマフラーに顔を埋めながら、ぷらぷらと歩き出した。だが、西原はむつの鞄の紐を指に引っ掛けて引き止めた。
「どこ行くんだ?反対だ」
「あ、そう?」
大丈夫かよと思いつつ、西原は頭をがりがりとかいた。マスクもマフラーもしているからか、むつの声は聞き取りにくい。もしかしたら、いつもより声自体が小さいのかもしれない。西原はむつに顎をしゃくって見せると、先に立って歩き出した。




