4話
わしっと狛犬の顔を両手で挟むと、口の端を引っ張ったりして、ぐしゃぐしゃと遠慮なく撫で回した。だが、それでも口を開く事はない。ほおを膨らませたむつだったが、膝の上の巾着のような物を持ち上げた。ずっしりとしているし、ちゃりっと音がする。紐をほどいて中身を見たむつは、きゅぅと紐を縛って山上に渡した。山上も中身を見て、顔を離したがまた顔を近付けた。
「2度見するやつだな、これ」
「だね。代金だよね、たぶん」
狛犬の方を見ると、そうだと言うように頷いた。これで依頼を受けても、ただ働きとはならずに済みそうだった。
「どうするよ、これ。先払いされたし、むつは怪我を治して貰ったし」
「でも、その前にお菓子の詰め合わせ渡してるし…今日もレーズンサンド大量に詰めたし。気に入ってたみたいだったから」
「…お前も祐斗もレーズン嫌いだから、これ幸いに詰め込んだだけだろ?」
図星をさされ、むつはあははと笑って誤魔化そうとしているが、冬四郎も西原もむつがレーズンを好まないのを知っているからか、呆れたような顔をしていた。
「まぁ…こさめには悪いけどね。ま、良いじゃん?喜んで食べてくれるなら。それより、仕事。受けるかだよ」
「お前は何にも出来ないもんな。湯野ちゃんじゃ適任しないし、祐斗じゃ頼りないし…」
はっきりと何も出来ないと山上に言われたむつは、しょんぼりとしたような顔をした。




