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4話
祐斗が詰めた菓子と新しく淹れた茶を持って、むつが戻っていくのを祐斗はキッチンから見ていた。
「お待たせしました」
土地神と冬四郎、西原は会話もなくぼんやりと茶をすすっていた。狛犬は誰からも菓子を貰えなかったのか、土地神の足元で拗ねたようにうずくまっている。
にこにことした土地神は、むつから紙袋を受け取って本当に嬉しそうにしている。その笑顔を見てむつも、微笑んだ。暗い目とは対照的に、その顔は怖さも威厳もなく、親しみやすさがあった。
淹れ直した熱い茶をすすり、土地神は、ゆっくりと立ち上がった。そろそろ帰るつもりなのだろう。むつは、少しほっとしたような表情を見せた。
「…狛犬は置いてくからね。便利に使ってやってくださいね」
「えっ!?」
何で、と言いかけたむつだったが口を閉ざした。すでに目の前に土地神の姿はなく、くすくすと悪戯っ子のような笑い声が微かに残っているだけだった。
「お、押し付けられた…」
どさっと椅子に座ったむつは、手をつけずに冷めていった茶をすすった。置いていかれた狛犬は、むつの様子を見て首を傾げている。