4話
むつはお盆に、菜々とこさめから貰った菓子と濃い目に入れたお茶を乗せると、ソファーに向かった。祐斗は颯介と山上にコーヒーを渡して、席に座った。
「よろしければ、召し上がってください」
「これは、これは…ご丁寧にありがとう。この前のとは、また違う物のようで」
ガラスボウルに盛られた焼き菓子を早速といった感じで、老人は手に取った。その横には、狛犬と呼ばれた犬が鎮座し物欲しそうに見ている。
むつは自分の椅子をからからと引いてくると、その横に立った。
「ご挨拶が遅れましたが、私玉奥むつと申します。先程は、怪我を治して頂いて、ありがとうございます」
きちんと腰を折り、挨拶するむつを老人が眩しそうに目を細めて見ている。
「こちらそこ。先日はご挨拶もしませんで…うちの狛犬がお世話になったあげく、今日はとんだご迷惑をおかけしました」
「いえ、そんな…」
「あ、お掛けになって。ゆっくりと話を聞いて頂けますかな?」
「あ、はい。では、失礼します」
椅子に座ると、とことこと狛犬をやってきて、大きな顔をむつの太股に乗せた。むつが、額をかくようにして撫でてやると狛犬は、ぱたぱたと尻尾を振った。




