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4話
むつは老人の手を取り立たせると、改めて礼を言った。そして、ソファーに座るように促した。老人は、にこにこと笑みを浮かべて、ソファーにゆっくり腰掛けた。
「さ、狛犬もおいでっ」
しゃがんで両手を広げて見せると、狛犬と呼ばれた犬はどどっと重たげな足音を響かせてむつに突進していった。勢いがあったのか、受け止めきれなかったむつは、ソファーにどんっと背中をぶつけたが、痛がる事もなくじゃれついてくる犬の頭をわしわしと撫でた。
「よしよし…お菓子効果かな?」
「美味しく頂いたよ。ありがとうね。そのお返しに、怪我を治したんだけどね。図々しいかもしれないけど…1つ頼まれ事、聞いてくれるかな?」
老人が言うと、むつは頷いた。
「はい。その前に…お茶淹れてきますよ。茶菓子も何かあったはずですから、それもお持ちします。少々、お待ちください」
むつは冬四郎と西原にもソファーをすすめ、祐斗に向かって顎を少しだけしゃくって見せた。祐斗がキッチンに向かっていくと、颯介と山上はそれぞれ自分の席に座った。