4話
「す、凄いですね‼むつさん、怪我治って良かったじゃないですか‼」
祐斗が喜んで、むつの側に寄ろうとしたが、山上に襟首を掴まれて、ぐえっという声を発した。
「近寄るなあほ。むつは下はいてないんだ」
「あ…そうでした」
むつはズボンをはこうとしたが、手を止めて自分の足を撫でた。傷は完全になくなり、触っても痛みも何もない。つるんとした白い肌は、軟膏をぬった後だからか、しっとりと手に吸い付くような肌触りだった。
「凄い…本当に、凄い」
怪我が完全に治り、むつは何度も自分の足を撫でている。これなら、もうズボンで擦れて痛む事も、風呂に入って染みる事もないだろう。
「むつ、そろそろズボンはきなさい」
「あ、はい」
冬四郎に言われると、むつは足を撫でるのをやめて、いそいそとズボンをはいた。とんとんっとジャンプして、スキニーパンツに尻まで押し込み、むつはコートを外して冬四郎に返した。
「ありがとう」
「良かったな。治って…で、今更だけどここはペットの立ち入り禁止か?」
「本当に今更ね。遥和さんもこさめも来るから…可、なんじゃないかな?」
西原に押さえられている、大きな犬が尻尾を振って、むつをじっと見ていた。