4話
ばたばたと走り、むつはよろず屋の事務所のドアを開けた。はぁ、はぁと荒く息をつくむつを、驚いたように颯介、祐斗、山上が見ている。
「…は…ギリセーフっ」
ちらっと壁掛けの時計に目をやった、山上は苦笑いをしている。本当に、ギリギリだった。
「2分前ですね」
「はっ…良かったぁ…間に合った…あ、おはようございまーす」
「おはよう。昨日も遅かったのか?」
「うん…5時前くらいで」
昨日よりも目の下に濃い隈を作っているむつは、朝から疲れた様子でよろよろと自分の席に行くと、鞄を置いた。
「…ばか、なのか?」
「楽しくって…つい、ね」
「まぁまぁ。むっちゃんが楽しく過ごしたんなら、それで良いじゃないですか。むっちゃんもコーヒー飲む?」
「うん。あ、自分でやるから」
ついでにタバコを吸いたいのか、鞄を漁っているがなかなか見付からない。諦めたのか、むつはじいっと山上を見た。
「1本くださいっ‼」
「ったく、しょうがねぇなぁ」
ぽんっと箱とライターを投げ渡され、むつはそれをキャッチすると、へへっと笑ってキッチンに入って行った。
「むつさん、元気になりましたね」
「…元気だけど、疲れてるね。素っぴん酷い顔になってるけどね」
「ばかだよな、ばか」
「聞こえてるんだらからねーっ‼」
起きてから何も口にしていないむつは、薄めのコーヒーを入れながら叫んだ。




