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4話
ズボンが擦れると怪我した場所が痛むのか、むつは舌打ちをしたが、脱ぐのも面倒なようだった。パーカーを羽織り、マフラーをして、むつは髪の毛を止めていたクリップを取った。
「こさめ、ごめん。行くわ‼適当にやってて、鍵はテーブルに置いてくから」
頭を軽く振りばさばさと髪の毛を下ろして、手櫛で整えると、むつはローテーブルを指差した。
「はいよ。財布持った?携帯は?」
「もっ…持った‼」
「はい、気を付けていってらっしゃい」
「本当、ごめんっ‼行ってきます‼」
鞄を掴んで、むつはばたばたと出ていく。仕事用のブーティに足をねじ込むと、ドアを開けて出て行ったが、すぐにまたドアを開けた。
「玄関、鍵閉めてから寝てね‼」
「大丈夫、いいから、行きなよ」
「お…はい‼行ってきます」
ばたんっとドアを閉めると、むつはばたばたと廊下を走った。そして、エレベータのボタンをかちかちと待ちきれない様子で連打したが、そんな事でエレベータが急いでくるわけでもない。むつは、落ち着きなく、そわそわとしていた。




