4話
朝の光がカーテンの隙間から差し込んできて、むつはようやく目を覚ました。いつもなら、携帯のアラームが鳴るはずだが、今朝はそれを聞いた気がしない。だが、もう外は明るいようだった。むつは眠そうに、寝返りうち枕元に置いてある携帯に手を伸ばした。
「…って!!やばっ!!」
眠そうに半開きだった目が、かっと見開かれむつはふとんを蹴り飛ばすようにして跳ね起きた。むつの声に驚いたのか、布団で寝ていたこさめも飛び起きた。
むつは、もこもこの部屋着を脱ぎ散らかし、クローゼットから下着とシャツを掴んで、ばたばたと風呂場に向かっていく。ばたんっとドアが閉まり、サァァァとシャワーの音が聞こえてくる。
「…お風呂は入るんだ」
昨日は化粧を落としただけで寝ているからか、むつは慌ててシャワーを浴びた。残念だが、髪の毛を洗う時間はない。風呂場で顔も洗い、歯みがきをして身体をふいて、下着を身に付けシャツを羽織った。ボタンを止めながら戻ってきたむつの髪の毛は、かすかに濡れている。怪我をした箇所にあるガーゼとネットもびっしょりと濡れ、むつはそれを剥がしてベッドに投げおき、靴下をはいて手近にあったスキニーパンツをはいた。
「…っう…いったぁ…もぅ‼」
「怪我してんのにスキニーにするから」
まだ菜々が熟睡しているのをいい事に、こさめは黒猫の姿に戻ってベッドに座っている。
「スーツじゃ走れないでしょ?」
「バイクは?」
「事務所に置きっぱなし」