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3話
「むつーっ‼」
ちかっちかっとライトと共に、こさめの声が聞こえると、むつは鼻をすすって、もう1度涙を拭った。冬四郎の手を借りて、むつがよろよろと立ち上がると駆け寄ってきたこさめが、むつの側に居る冬四郎に、いぶかしげな視線を向けた。
「むつ大丈夫?」
「うん、大丈夫。菜々は?」
「交番に預けてきた」
迷子か何かのような言いように、むつはぷっと吹き出した。くすくすと笑うむつと、気まずそうな冬四郎をこさめは交互に見た。
こさめから少し遅れて、交番勤務の制服警官が駆け寄ってくると、冬四郎は身分を明かしたうえで、自ら説明を行った。
「…何もなくて、良かった」
「こさめ、ありがと。帰ろっか、菜々迎えに行かなきゃ…また説明しろって言われそうね」
「このくらいの説明してあげようよ。全力で走らせたから、菜々ちゃん喋れないくらい息切れしてるわよ」
「悪い事しちゃったね」
「むつ、あとをつけられてたんだろ?ストーカーか何かか?交番で、一応お前からも説明しなさい。終わったら、マンションまで送ってあげるから」
「しろー居たら安心ね」
「…そうね。送って貰おうか」