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3話
右に曲がるまでは、むつも一緒に走っていたが、ぱっと菜々の手を離してこさめに任せると、きゅっと立ち止まり民家の壁に背中をぴたっとつけた。こさめが菜々を連れて、ばたばたと走っていくのを目の端でむつは確認した。
少し遅れて、小走りにやってくる足音が聞こえてきた。足音が近付いてくると、むつは買い物袋を両手で掴んで、相手が曲がってきた所でぶんっと振り回した。
「っ…ってぇ‼」
「ちょっと!!何なのよ‼」
相手の顔に、むつの振り回した買い物袋が当たった。むつは次に備えて、買い物袋は、手放さずに持っている。
「…っう、何だよ…」
「…え?」
「いってぇ…」
「…え、何?え…しろーちゃん?」
聞き慣れた声に、むつは買い物袋を持っていた手を下げた。