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3話
満員電車初体験なのか、こさめは立っていられず。揺れるたびに、あっちにふらふら、こっちにふらふらしている。見かねたむつが、こさめの腰に手を回して自分に掴まるようにさせている。菜々も慣れていないようで、むつの腕を力強く握っている。
「ねぇ、こさめ?何かさ…視線を感じるけど…さっきのとは違う気がしない?」
「うぅ…こんだけ人居たら何が何だか…でも、気配はないね。今度は違うのに、つけられてる?」
「…かも。あたしらだけなら、まく自信あるけど、菜々は…運動音痴なんだよね」
「とりあえず、スーパーで考えよ。ねぇ…まだぁ?早く、降りたい」
「次の次だから…菜々、次の次で降りるよ」
「はぁい…」
菜々もこさめも満員電車に疲れたのか、会話する元気もないようだ。普段乗らないなら仕方ないが、普段から電車を使うむつでも、満員電車は嫌いだし慣れる物でもなかった。