3話
コートを羽織り、マフラーとマスクをしたむつは菜々とこさめと一緒に事務所から出ていった。
「うぅ…寒っ」
冷たい風が吹き付けると、むつは寒そうに身を縮めながら菜々にぴったりとくっついた。こさめも寒いのは苦手なようで、菜々にくっついている。
「ねぇ…もう真っ暗だし…早く行こ行こ。で、むつは何を作ってくれるのかしら?」
「こさめは、お肉がいい!!」
「焼き肉?煙が…あ、ローストビーフしてあげるよ。んーっ、あとは何にしようかしら?」
「ローストビーフならワイン必要ね。あ、あんたん家、たこ焼き器あったよね?あれでアヒージョは?」
「あ、良いかも。ついでに、たこ焼きもしよっか?こさめ、たこ焼きした事ないでしょ?」
こさめが頷くと、むつは何が必要かしらと指折り買い物リストを呟いた。むつとこさめは時折、然り気無く後ろを見たり、辺りを気にしながら菜々と一緒に駅に入っていった。
帰宅ラッシュにあたる時間なのか、3人は満員電車の中で、サラリーマンらしき男たちに、ぎゅうぎゅうと押し潰されてもめげずに、会話をしてはくすくすと笑い合った。だが、むつはやはり周囲を気にするようにして、辺りを見回したりしていた。