3話
「…みや、悪いけど時間あるなら会えるか?むつ戻って来たんだけどな、誰かにつけられてるって言ってたんだ。人じゃないみたいだけど…」
『分かりました。西原も呼びますか?』
「そう、だな…むつにバレないように、どっかで落ち合うか。また連絡する」
ぷつっと電話を切り、山上は事務所に戻った。すでに机にはケーキとコーヒーが置いてあった。
「お、ありがとうな」
「うん」
むつも席に座って、コーヒーを飲んでいた。ついさっきまで、机に灰皿を置いていたが、その 灰皿も片付けられ窓も閉まっていた。山上は苦笑いを浮かべ、椅子に座ると土産のケーキにフォークを刺した。
「あ、はぁい?大丈夫?」
唐突にむつが喋り出すと、山上はむつの方を見た。むつは口だけを動かして、こさめだと言った。
『うん、そっちは?』
「大丈夫…たぶん。夜さ、どうしよ?どっかで待ち合わせしたいけど、またつけられてってなると…」
『そうよね…今は?』
「事務所に戻ったから分かんない…でも、大丈夫そうな気がするけど」
『なら…終わる時間分かりそうならメールしてくれる?菜々ちゃんと一緒に迎えに行くから、ね』
「…うん。じゃあ、それで。またメールするね」
通話を終えたむつは、携帯を机に置いた。折角、菜々とこさめと楽しく過ごしたはずなのに、表情はさえなかった。




