3話
かつ、かつ、と疲れたような足音をさせてむつが戻ってきた。颯介や祐斗より早く戻ってくるとは思わなかった山上は、驚いたような顔をしていた。それに、もっと楽しげな顔をして戻ってくるかと思ったが、意外と険しい表情をしていた。
「…ど、どうした?」
「うん…ちょっとね…これ、お土産」
「お、おぉ、ありがとう」
ケーキの入った箱を山上に押し付け、むつは、はぁはぁと息を切らせつつ、山上のコートを掴んで頭からかぶって窓に寄った。むつが何をしようとしているのか、さっぱり分からない山上は箱を机に置いて、中身を確認している。
「…誰かついてきてた」
「…はっ!?」
「事務所出た時から、ずっと…こさめも気付いてたから、たぶん気のせいじゃない。だから、あたし先に出たの。もし、向こうの2人が目当てなら、あたしの後はつけないはず。でも、こっちに来たから…たぶん、あの2人は大丈夫だと思う」
「ちょ、ちょっと待て…え?追いかけられたのか?それで、息切れしてんのか?」
「ううん…エレベータ使ったら、何階で降りるかバレちゃうから、階段で…つらっ」
むつは窓から離れて、山上のコートを元の椅子にかけると、はぁと深呼吸をした。




