3話
むつが土産のケーキを手に、ゆっくり事務所に向かい始めた頃、また電話が鳴った。だが、今度は山上の携帯だった。
「…何だよ」
『ご機嫌斜めですね?むつ、居ますか?電話したんですけど…電波が届かないか電源が入ってないみたいで』
電話の相手、冬四郎は山上の機嫌の悪さなど気にもしていない様子だった。
「むつなら、ランチだぞ。友達と」
『友達?』
「あぁ、こさめさんと朋枝さんが来てくれたからな。電波入らないなら、地下のパスタ屋かもな…で、どうした?」
『さっき、西原からも連絡あったんですが…むつを知ってるかって年寄りからの電話が署にあったみたいで。うちの署にもあって…他の人が出たんで、知らないって答えたそうなんですが、あとから署員がむつの名前で検索して、俺の妹だって分かって、知らせてくれたんですよ』
「…西原の所にも同じ内容で、年寄りからの電話があったって事か?」
『えぇ。西原の所には、最初に西原居るかって電話だったそうで…西原が出て、むつを知ってるか聞かれたみたいです。西原は否定も肯定もせずに、相手の事を聞いたみたいなんですが、切られたそうです。番号も通知されてなかったけど、公衆電話だろうって言ってましたよ』
「…うちにもあったぞ」
『えぇ‼何なんですか?』
「知らん。俺は仕事の依頼か何かだと思ったから、居るって言っちまった。けど、やっぱ番号は通知されてなかったし、名乗りもせずに切られた」
『何か気持ち悪いですね』
「あぁ…この前の事があるし、ちょっと気になる電話だよな」
『そうですね。とりあえず…今は電話があったってだけですから…どうしようもないですけど。気を付けるようには言っといてください』
「分かった。また、何かあれば教えてくれ」
電話が切れると山上は、ふぅと息をついた。