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3話
「なら、2人で遊んでて。早めに仕事終わらせるから…そしたら、うちで呑もっか」
「やったーっ‼むつ、何か作ってね」
「はいはい」
むつは中年女性を呼ぶと、ケーキを何種類か適当に持ち帰りように詰めて貰った。ケーキを平らげ、タバコを吸いながらコーヒーを飲んだむつは、携帯を出して手早くメールを打った。
「あ、こさめ。篠田さんにこっち着いた事くらいメールしといてあげなよ」
赤いカバーのついている携帯をむつが、軽く振るように見せるとこさめは頷いて、すぐに携帯を取り出した。メール画面を開いて、ちらっとむつを見た。むつは顎を引くように、かすかに頷いた。
「あたしは先に行くね。社長にケーキ持ってってあげないとだし」
「…あんな見た目で甘党なの?」
「ここのは好きみたいだから。来た時にはね。菜々とこさめからのやつも、すでに開けてると思うけどね」
むつが伝票を掴んで立つと、菜々とこさめが待って、待ってと言ったがむつはここは良いからと、逃げるようにレジに向かってしまった。