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3話
「…何だろうね。初めての気配」
「むつでも分からないの?」
こさめが意外だというように、目を丸くしている。真ん丸くなった目は、猫が驚いている表情そのものだった。
「うん…けど、悪い気はしないけど」
「でも、この前の事があるし。良いか悪いかなんて、確かめるまで分かんないわよ?ちょっと不用心すぎない?」
「かなぁ?」
むつが眉尻を下げて、困ったような顔をすると、こさめは逆に目をつり上げた。怖っとむつは思ったが、口には出さない。この前の事、拐われた事件の事があるから注意は怠ってはいけないはずだった。それに、今は能力が使えない。使えないからと札も人形も持ち合わせていない。こさめの言う通り、確かめもせず、良い悪いを決めて楽観的に構えてはいけない。
「むつ、どうしたの?あんたなら、すぐに気付いても良いんじゃないの?菜々ちゃんはただの人なんだから…何かあってからじゃ間に合わないわよ」
「…はい。すみません」
しゅんとしたむつは、フォークについているチョコレートをがしがしと噛むようにして取った。