3話
「…冷めちゃうよ?コールスローも折角だし、食べようよ。たまにお土産にして貰うくらい、ここのは美味しいんだよ?」
むつは再びスープをすくって、口に入れた。だが、飲み下すまでには、少し時間がかかっているようだ。
「そうね。ね、むつの一口頂戴よ」
「良いよ。あ、あたしこさめの欲しい」
「あたしも、あたしも」
3人は食事に集中する事に決めたのか、一口ずつ交換と言って皿を回した。こさめの海鮮餡掛けは、甘めの味付けだが、しっかりと海老やホタテの味が餡に溶け出しているし、菜々のCランチはぴりっとした黒胡椒が効いている食べ慣れた味だった。
「ん、これ牡蠣入ってる‼むつ、昼間っから贅沢してない?もーらいっ」
菜々は大振りの牡蠣を頬張っては、美味しいと笑みを浮かべている。そこから、今年はまだ牡蠣小屋行ってないとか、どこのが美味しいとかそんな話に変わった。しんみりとした雰囲気から、明るい雰囲気にすぐに変わり、さっきまでの事はなかったように話せるのは、仲が良い女の子同士だからだろう。
スパゲティを完食し、しっかり食後のデザートとコーヒーを頼みながら、むつはテーブルの下で携帯を見た。山上には悪いと思うが、もう少し菜々とこさめと過ごしても良いかな、と思っていた。今の楽しい時間から、一緒に笑い合える2人から離れがたかった。