3話
「…何かさ、死ぬかもとか、怖いとかって言うのは何回も思った事ある。仕事で。でも、この前みたいに皆の所に戻れないのかもって思った事は無かったのよね。大きな仕事なら、颯介さんも祐斗も居るし、社長も絶対に事務所で待っててくれるから。けど、皆と離れてるのは…怖かったわ、本当に」
むつがすくったスープを皿に戻すように、スプーンを置いて染々とした様子で言うと、菜々とこさめも手を止めた。
「でも、皆待っててくれたんでしょ?」
「うん。待つのと待たされるのと…どっちが辛いか、何て言った文豪が居たけど…あたしは待たれる方が辛いかな」
「あんた…珍しいわね。そんな風に自分の感情とか思ってる事をそうやって、素直に言うの」
「かもね…あたしだって弱ってる時はあんの」
「そーゆー時こそ、菜々ちゃんに電話したり、あたしに電話するべきじゃないの?もしかして、存在忘れてた?」
こさめが目を細めている。黒目まで一緒に細くなっていて、むつは少し慌てた。
「まさか、まさか…仲良いほど言いにくい事はあるのよ?色々とさ…」
「まだ、あるんだ?」
「ある」
むつがはっきり言うと、菜々とこさめは顔を見合わせた。隠さずに、言い切った辺り、いつものむつらしくはない。