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3話
階段は狭く急で、人とすれ違う事も出来ない。だが、慣れているむつはヒールのある靴でもとんとんとんっと足取り軽く下りていく。菜々とこさめは足元を確認し、手すりに掴まりながらゆっくり慎重にだった。
カフェのようにベルのついたドアを開け、先に店内に入ると顔見知りの中年の女性が、むつの顔を見て軽く手を振った。むつは会釈し、菜々とこさめを待ってから奥にあるテーブル席に向かった。
「わぁ…穴蔵みたい」
「うん。何か外国の地下のバーみたい」
菜々とこさめは辺りを見回している。地下を掘ったまんま、という感じで、壁も天井も地肌がむき出しになっている。だが、実際はそう見せているだけで、淡いオレンジ色の光とテーブルのランプしかないから、そう見えるだけだった。
「何にする?ここ、餡掛けスパ美味しいの」
メニューを開き、オススメを言いながらもむつの視線は、冬季限定メニューに向いていた。




