3話
納得していると、菜々がちらちらと視線を送ってきた。
「あ、菜々。その、あんたがお世話になった人ね、あたしが前に一緒に仕事をした篠田さんって方のか…」
飼い猫と言うべきか彼女と言うべきか悩んだむつは、言葉を切ってしまった。こさめの方をちらっと見ると、軽く首を振った。
「か、彼女のこさめさん。で、こさめ。この子は、あたしの幼馴染みの朋枝菜々」
むつから簡単な紹介を受けて、こさめと菜々は改めて挨拶をしている。
「…で、こさめ?篠田さん抜きで1人で?篠田さんにはちゃんと言ってあるんだよね?」
「勿論、勿論。むつの所に泊まるって言って出てきてるけど…良い?」
「うん、おっけ。にしても、よく1人でここまで来るのを篠田さんが許可したよね」
「まぁね。直弥は今、忙しいし…で、そうそう忘れてた。さっき、社長のお土産は渡したけど。はい、これ。これは皆でどうぞ」
紙袋から箱を出して、こさめはむつに渡した。新幹線に乗る前に買ったのだろうか、売店のシールが貼ってある。
「…あ、わざわざ、ご丁寧に…ありがとうございます。そっか…何か分かったよ。篠田さんが遠出を許可したわけ」
菓子の入った箱をテーブルに置きながら、むつはくすくすと笑った。
「こさめさん、ちょっとの間にすっごく、しっかりしたもんな。これなら、篠田も安心するわけだよ」
むつの思った事を、山上も感じていたのか、こさめから貰った箱を早速開けながら言っていた。