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3話
寝不足で、パソコン画面を見ているのは辛いのか、むつも颯介も目頭を揉んだりしている。祐斗も欠伸を連発しながら、むつに直された物を見ながら書類の作成を行っている。何もしていないのは、山上だけだった。
「…コーヒー飲む人?」
空になったマグカップを持ち、誰にも頼めないと思ったのか、山上が言うと遠慮のない、むつ、颯介、祐斗はマグカップを持ち上げた。3人とも誰かが、言い出すのを待っていたのかのように、マグカップの中身は空っぽだった。
「薄めでお願いしまーす」
「あ、じゃあ俺は甘めで」
「うーん…俺は濃いめがいいです」
キッチンに向かっていく山上に、むつが声をかけると、つられたように祐斗と颯介も自分の今の好みを伝えた。振り返った山上は、嫌そうな顔をしたが文句は言わなかった。そして、きっちり3人の注文通りのコーヒーを持ってきた。
「ありがとうございまーす」
むつはマグカップを受け取り、嬉しそうな笑みを浮かべた。入れ直したコーヒーの香りが事務所内に漂い、ゆったりとした時間が流れている。




